広大鶏と東広島こい地鶏についての解説 ひろだいどり ひがしひろしまこいじどり


広大鶏(ひろだいどり)」について、大変面白く、解かり易い資料を見つけたので、
世間に広く知っていただくために、転載します。


広大鶏を作出した竹之内惇農学博士(元・広島大学大学院、現・Gallus JAPAN 株式会社 代表取締役)が、母校の研究室に宛てた会報記事です。
———————
ニワトリと日本
ニワトリの学名は「Gallus gallus domesticus」と、野生種を家畜化したものです。
ニワトリの野生原種は遺伝子解析の結果から、中国・東南アジア周辺に生息するセキショクヤケイ(赤色野鶏)であると考えられています。
ニワトリの日本への流入は、弥生時代ごろに、中国大陸から入ってきたのではないか、と言われていますが、
書物に残っているのは、平安時代からになるそうです。

当時のヒトにとっては、朝を告げることから、神の使い(闇や魔を払う)として利用されました。
そして他国の交流が増えるにつれて、蜀(中国)からショクケイ(蜀鶏)
シャム(タイ)からシャモ(軍鶏)
チャンパ(ベトナム)からチャボ(矮鶏)が来ました。

江戸時代になると、ニワトリを意図的に交配させ、様々な特徴を持つニワトリが多く作出されました。
これらを日本独自のニワトリ品種日本鶏(にほんけい)と呼びます。
当時の日本鶏は食用ではなく、観賞用目的に飼育・改良されました。
ニワトリは、見て(色鮮やか、尾が長い)、聞いて(美しく、長く鳴く)、競わせて(闘う)楽しむ、愛玩動物でした。
本格的に食用として改良し始めたのは、明治以降になります。
その後、海外企業が保有する優れた生産性をもつ商用鶏の雛を輸入・利用することで、鶏肉・鶏卵の安定生産が可能となりました。
生産性は劣るが、良質な肉質をもつ一部の日本鶏は、素材鶏として利用され、地域の特産地鶏の生産に活用されています。


日本独自のニワトリ「日本鶏」
記録に残るものでも、50品種以上の多様な日本鶏が作出されました。
個性豊かな日本鶏は、品種ごとに様々な特徴を示す遺伝子を保有しています。
外観に関わるものだけでも、羽の色・模様・形、鶏冠の形、目や足の色、体格、尾の長さなど多種多様です。
染色体数も 2n=78 と多く、上記のような各遺伝子の組み合わせで、何万パターンもの外観のニワトリが作れる可能性があります。
これがニワトリの魅力です。
日本鶏愛好家の手によって、現在も40品種程は存続しています。(10品種以上は絶滅
しかし、現代では趣味も多様化し、ニワトリへの興味が薄れ、年々減る一方です。
今後、研究価値や商用価値がないニワトリ品種は途絶えていくことでしょう。
こういった背景からも、ニワトリのことを知ってもらおうと考えていく中で、一つの挑戦に至りました。


広島大学で新たなニワトリを作る「広大鶏(ひろだいどり)」
私は2021年の3月まで、広島大学の都築政起教授のもとで、7年間ニワトリの研究を行ってきました。
都築教授のもとでは、なんと日本鶏が30 品種以上も飼育されています。
日本で唯一、日本鶏の品種比較の研究が行える場所です。
都築教授の知識や経験、素材力を生かし、最もおいしいニワトリが作れないかと考え、
2015年頃より試行錯誤を開始しました。
そして2020年、新たなニワトリ「広大鶏(ひろだいどり)」を作出し、
広島大学の知財部において、ライセンス登録しました。
「広大鶏」は、日本鶏品種である土佐九斤(とさくきん:高知県原産)インギー鶏(鹿児島県原産)の 品種を掛け合わせ、
世代交代を繰り返しながら、優良な形質を残すよう改良したニワトリです。
以下に、「広大鶏」の特徴を説明させていただきます。

まずは、肉質についてです。
コーチン系の特徴をもち、
肉は黄色っぽく、臭みがなく、胸肉の旨味が濃い
そして、優れた脂質をもちます。
脂肪酸組成を調査すると、不飽和脂肪酸が70%以上あります。
これは上質な脂肪を持つブランド和牛やイベリコ豚と同等です。
また、不飽和脂肪酸の中でも、牛や豚のようにオレイン酸(融点 13.4°C)が多いだけでなく、
リノール酸(融点-5°C)パルミトレイン酸(融点-0.1°C)も豊富です。
特に、ニワトリ(鳥類)は他の動物に比べ、リノール酸の割合が20%と多いため、脂肪の融点がとても低くなります。
そのため、くち溶けが良く、すっきりとした脂となります。
また、アンセリンカルノシンと言って機能性成分も多く含みます。
おいしくて健康的、それが鶏肉です。

次に、おとなしい性格が特徴です。
肉用鶏は基本的に平飼いで群飼育されるため、性格(社会性)は重要です。
臆病な性格であると、大きな音や動きに驚きパニックとなり、お互いが押し合い圧死することがあります。
また、同時に飼育できるオスの羽数や、雌雄のバランスなども性格によります。
よって、攻撃性が低く、穏やかな性格のニワトリが養鶏には適していると言えます。

最後に、見た目が美しい
美麗な黄色~褐色な羽毛、そして構造色(色素ではなく構造により光を反射させて作り出す)により、
金色に輝くニワトリとなっています。
簡単ではありますが、以上が「広大鶏」の特徴です。

広島大学発ベンチャー「Gallus JAPAN 株式会社」を設立
広大鶏を世に出すには、法人組織が必要です。
そこで広島大学のライセンスを用いて事業を行う広島大学発ベンチャー「Gallus JAPAN 株式会社」を設立しました。
経営を成り立たせると共に、広大鶏を守っていかねばなりません。
(現在、広大鶏は「季節料理なかしま」さんにて食べることができます。)

東広島市の特産品「東広島こい地鶏」
産官学(広島大学、東広島市、民間企業)の連携で、東広島市の特産品となる地鶏「東広島こい地鶏」が開発されました。
雄系種鶏「広大鶏」と雌系種鶏「ロードアイランドレッド」を交配させ、
得られた子供(雑種)を「東広島こい地鶏」と呼びます。
2 品種を交配させることで、旨さと生産性を兼ね備えた地鶏となりました。
多くの場合、公設試験場が主体となって地鶏の生産を行っていますが、本事業ではすべての業務を民間企業が行います。
原種鶏業務(広大鶏の維持・育種)、種鶏業務(東広島こい地鶏の雛を生産)、コマーシャル鶏生産(東広島こい地鶏を飼育)、
食鳥処理場のすべての施設を東広島市内に新設することから始め、
地鶏事業を立ち上げます。
Gallus JAPAN 株式会社は原種鶏および種鶏業務を担います
今後、市場に東広島こい地鶏が出回った際には、ぜひ食べてみて下さい。

最後に
日本独自のニワトリ「日本鶏」は、
個性豊かな外見だけでなく、優れた肉質をもち、
とても有用な遺伝子資源であると言えます。
この日本鶏が多岐にわたって活用され、世界からも評価を得ることができるような事業ができればと、考えています。
今後とも応援頂けますと幸いです。ありがとうございました。
(2021年12月記。山口大学共同獣医学部様の一般公開会報誌より転載)

併せて、「専門料理2021年9月号」にて、広大鶏の特集がされています。

こちらもぜひ併せて読んでみてください。
この情報が役に立ったなら♪
押してくださいにゃ
icon-01
広島ブログ
にほんブログ村 グルメブログ 中国地方食べ歩きへ 人気ブログランキングへ

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

このサイトはスパムを低減するために Akismet を使っています。コメントデータの処理方法の詳細はこちらをご覧ください